親力 ③

Posted By on 2022年2月8日

 娘が中学二年生の時です。僕の部屋にやってきて、パソコンでいろいろと仕事をしている僕の後ろの方で、本棚の本を取り出してぱらぱらめくったり、ぼんやりしていたりしていました。
「知子、何かあったのか?」
と聞きました。
 すると、娘は、今の自分の悩みをとつとつと語り始めたのです。
「私の学校で、うちのクラスじゃないんだけれど、いじめにあっていると思える子どもがいるの。私はなんとかしてあげたいと思うけれども、クラスは違うし、担任の先生は信用できないし、自分には勇気がないんだなあと思ったら、落ち込んでしまう。」
と言うのです。そこで僕は
「なあ、そのことに対して責任のある大人は何をしているんだろうね。まず、そのいじめられている子どものお父さんとお母さんは、何もしてないんでしょ。それから、担任の先生は何をしているんだ。少なくとも、何か声掛けをするべきじゃないのかな?そして、いじめている子どもの親は何をしているんだろう。知らん顔しているのかな?
 子どもに対して責任のある大人たちが何もしていないのに、離れたところにいるお前にできることはほとんどないんだよ。
 でも、お前がそこで悩んでいることは無駄なことではない。その思いをしっかりと持って大人になりなさい。そして、大人になって、自分の目の届く範囲で起こったことについては、責任持って取り組んでいけばいいんだよ。」
と、話しました。
 娘はしばらく僕の背中に背中をくっつけて考えていましたが、
「分かった。」
と言って自分の部屋に戻りました。
 ふだんから、だらしない恰好を見せつけていたら、このような相談事は掛けてこなかったろうなあと思うのです。

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