親切な地主さん

Posted By on 2011年8月4日

「エルシー・ピドックゆめでなわとびをする」のエリノア・ファージョンは、児童文学に確固たる信念を持った作家である。

僕がいろんなところで紹介しているのが、「ムギと王様」。

これは分厚い本だが、オムニバスだから、一つ一つの話は中編と言ってよい。

中でも、「親切な地主さん」は、優れた作品である。

この話は、強欲な大金持ちの地主が、一人の子どもとの出会いによって変わるという

パターン的には、小公子と少し似たところもある。

子どもは、純粋に苦しむ人たちを放っておけない。地主に、救ってあげてと頼む。

しかし、地主が亡くなったとき、一文無しになったのに、

村の人たちがみんなで子どものめんどうを見ていこうとする。

こうやって書くと、すばらしさは伝わらないが、

僕はなんど読んでも、あたたかい涙があふれてしまう。

ストーリイも分かっているのに、心に言葉がしみこんでくる。

「ムギと王様」は、文庫本でも上下二巻で出ている。

こちらには、なぜか、「親切な地主さん」は載っていない。

だから、文庫はだめ。読むなら、分厚い本の方を。

編集者の見識を疑う。

About The Author

Comments

Comments are closed.