帰国子女学級 そのⅤ

Posted By on 2015年11月5日

一番のポイントは言葉の概念であった。
当たり前のことが分からない。
その言葉の持つ概念が分からない。

なんだったか詳しくは覚えていないが、
白糸の滝のような滝に打たれるというような話をしていたときに、
「そんなことしたら、死んじゃうよ。」
と言われた。
カナダから帰ってきた子どもだった。
なるほど、その子にとっての「滝」は、ナイアガラなのだから。

授業中に、
「もっとていねいに書きなさい。」
と言ったら、
「ていねいって、なあに?」
と聞かれた。
これは困った。あまりにも当たり前の言葉過ぎて
説明のしようがない。
そのとき僕は、黒板にこいのぼりを描いた。
一つはさっさと乱暴に適当に。
もう一つは少していねいに細かく。
「これが、ていねいってことだよ。」
と、説明した。

教室に「ていねい」という言葉の分からない子どもがいるという前提で
僕の教育は始まったということだ。
だから、いつも子どもたちの反応を大切にしてきた。
ちょっとでも疑問に感じたら、それを表現できる学級づくりと
僕との関係づくりを大切にしてきた。

それも、あの子たちに教わったことである。

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