きょうの一冊 【39】

Posted By on 2014年5月2日

「おじさんのかさ」

佐野  洋子
私的なことですが、高校のときの友人になかなか面白い男がいました。

先生が前に立って話をしてもだれも聞いていないのに、

この男が生徒会の代表として話し始めると、

全員が聞き入ってしまうのです。

 

ある雨の日、傘を手に持ってささずにあるいているので、

どうしたのかとたずねると、

「傘さしたら、傘がぬれるやんか。」

と、まじめな顔をして答えました。

このお話を読むときには、いつもその男の顔が浮かんでしまいます。

このおじさんも傘をさすのがもったいなくて、

雨がふっても人の傘におじゃましたり、傘を持って雨宿りしたりするのです。

 

そんなある日、不思議な二人の子どもの歌に心が動かされます。

「雨がふったら、ぴっしゃんしゃん。」

このフレーズに誘われて、ついにおじさんも傘を開いてしまうのです。

かたくなな人の心も、こんなふうにしてゆるんでいくのかも知れませんね。

子どもたちもこのフレーズにのって、にこにこしながら

「ぴっしゃんしゃん」

と歌っています。

 

About The Author

Comments

Comments are closed.