なぜ感動が必要なのか

Posted By on 2011年8月23日

「二人会」で話したこと。そのまま敬体で書く。

「感動」するときの脳の仕組みは、どうなっているのでしょうか。

最近の脳の研究は飛躍的に進んでいます。
実は、僕は学生のとき、教育衛生学なるものが専攻で、大脳生理学を専門にしていました。

教育となんの関係があるのでしょうね。 あるのですが、説明してると長くなるので、やめておきます。

指導教官の佐守先生は医学博士で、猫の脳を解剖したり、ねずみを鉄の板の上を走らせたりと、変な実験もさせられました。

そのころは、脳というものは神秘の世界だったのです。

すごいですよ、今は。 キムタクのドラマ、「ミスターブレイン」でも少し出ていましたが、

そのころには全く分からなかった、感情のある部位がどこにあるのかとか、

脳内ホルモンというものがあることなど、

この頭の中の仕組みがしだいに明らかになってきています。

それによって、感動というものの正体も明らかになってきています。
「感動」というのは、脳が何か刺激をうけたとき、例えば本を読んだり映画を見たり、スポーツしたり、恋をしたりしたときに、脳が思いっきり力を出して、今経験している「そのこと」の意味を逃がさないようにしっかりとつかんでおこうとする動きなのだそうです。

人間は感動したときに、そのことによって人生が変わってしまうことがあります。

変わるというと、人生の方向性や性格が変わることだと思うかもしれませんが、そういうことではありません。

日本人初のノーベル賞をもらった湯川秀樹さんは、子供のころ、

木々の葉と葉の間から、木漏れ日がきらきらと輝いてさしてくることに感動して、

いつまでも見つめていたことがあるそうです。

大人になって学者になり、分子の構造を調べていていきづまったとき、

ふと、そのときのことを思い出して、ぱっとひらめいたのが、

ノーベル賞をうけるもととなった中間子理論という考え方でした。

子供のときの感動が、偉大な発見をもたらしたわけですね。
ほかにも、感動したことが、その人の人生の方向を決めてしまったことなど、いくらでもありますよ。

強い感動を受けたとき、脳は、それを記憶しようとします。それは「人生にとって大切なことがあるぞ、さあ、覚えておこう」っていう感じなのですね。

そして、感動によって脳が活性化していきます。ということは、感動の多い人は、若々しいっていうことですよ。

人生には感動が必要だということです。若々しいお年寄りって、必ず、ちょっとしたことにも感動したりしている人たちですよね。

大きな感動である必要はありません。さきほどの湯川さんのことなどは、小さな静かな感動ですよね。

感動して、つまり心がぐっと動いたときに、これは生きていくのに必要なんだぞということを脳が感知して、記憶にとどめようとするのですね。

つまり、平板な当たり前の授業をしていたら、子どもたちはなんにも覚えていってくれないということです。

中村さんのような楽しくおもしろいことでもいいし、胸にじんとくるものでもいい。

何か、工夫をすることで、学習が楽しくなり、定着度も上がるのです。

 

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Comments

3 Responses to “なぜ感動が必要なのか”

  1. マツシタ より:

     確かに「感動」で「人生が変わる」ということはあると思います。

     そこでひとつ質問です。
    自分は「感動」で「人生が変わる」という経験の一方で、
    マイナスの経験で「人生を変えてきた」気がします。
    この辛い経験だけはもう2度としたくない、
    この辛い経験だけはどんなことがあっても忘れない、
    と心に誓い、何かあった時に思い出すのです。
    そしてそこから行動を変えていく。何かがひらめく。
    これって「感動」ですか?
    脳の使っている部分は同じなのでしょうか??

     前回、丁寧な返信をいただけたので
    味をしめて書き込みました。
    本当は自分で調べなければいけないのですが・・・。

  2. taga より:

    松下さんへ
    マイナスも感動です。脳の使っている部分は、少しずつ違っているようですが、どこがどうということは、さすがに専門家ではないので分かりません。
    ただし、人間には、自分にマイナスに働く感動は、なんとか排除したり消化したりしようとする働きがあります。
    「消化」よりも「昇華」という言葉が適切です。
    そうやっていかないと、トラウマになって人の心を支配したり、落ち込んで身動きがとれなくなったりします。
    「はき出す」という作業がとても大切で、泣いたりさけんだりすることも、人にとって必要なことなのでしょうね。

    僕の恩師、岡田崇先生が、
    「人間はな、イヤなことから忘れていける能力があるんやで。そうやないと、長いこと生きていると苦しすぎて死んでしまうやろ。」
    と、おっしゃいましたが、言い得て妙ですね。

  3. マツシタ より:

     即返信、ありがとうございます。

     先生の返信で「そうか!やっぱり!!」と「感動」しました。
    (なんか変な表現ですね・・・)
    いろいろひらめきそうです。

     心に強く刺激を受けるという意味ではプラスもマイナスもない。
    そして、マイナスの場合、
    それを「昇華」する必要がある。
    自分の場合はそれを「次」につなげることで
    なしえているわけですね。

    マイナス思考も「昇華」によって
    一般的に言われている「感動」のようなプラスの体験に変わる、
    これは自分の中ではすごい発見です。

     天の邪鬼な自分は、「イヤなことを忘れる」ことが嫌いなのです。
    だから苦しい。
    それでも忘れていることは多いと思います。
    じゃないと、本当に苦しすぎて死んでしまいますよね。

     ありがとうございました!!