矜持 5

Posted By on 2012年9月29日

◎ 阪神大震災の直後、

学校の靴箱にあった子どもたちの上靴が

いくつも無くなっていた。

 

裸足で逃げ出してきて、

そのまま家が焼かれてしまった人もいらっしゃるんだから、

仕方ないなあと思っていた。

 

一か月経って、

学校へ、手紙とともに新しい上履きが送られてきた。

 

「必要にせまられて、申し訳ないことですが、

上靴を一足、勝手にいただいてしまいました。

どのお子さんのものか分かりませんが、

同じサイズの靴を買いましたので、

どうぞお返しください。」

 

◎ 何日も運動場に放置してあった車が何十台もあった。

多くの方は、黙って乗って帰られた。

 

こんな大惨事の後だから、誰もそれを悪いとは思わない。

 

でも、ある晩、

ご家族でいらっしゃって、

「一日避難させて頂いた後、ずっと東京に行っておりました。

ご迷惑おかけして申し訳ありません。

今日、持って帰ります。」

と、深々と頭を下げられた方がいらっしゃった。

 

 

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