襲撃№3
Posted By taga on 2012年9月12日
神社の前で、とりあえず一息ついていると、
惨状が明らかになってきました。
「先生っ、T君がっ、T君がっ。」
T君が転げまわっています。
「いたいー。いたいよー。」
F先生が、「ともかく下に連れて行く」と、
T君を連れて下りてくれました。
十人以上の子どもが、痛い痛いと泣いていました。
O崎先生も頭をおさえて顔をしかめています。
M先生は、手も血が流れて、苦しいような笑っているような不思議な表情をしていました。
「せんせーい、ゆみ子がー。」
「みかもだよー。」
この二人はわめいてはいませんでした。
ともかく学年ごとに並ばせました。
「6年生がこんなにごじゃごじゃになっていてどうする。
君らがしっかりせなあかん。
気をしゃんとせい。」
そうこうしていると、とつぜん、
「せんせーい、ゆうきがー。」
「えっ。」
振り向くと、ランニング姿のY君が、
頭の上にたくさんのハチをのせて
泣きながら走ってきます。
誰かが、ハチをはらってくれました。
「ゆうき、なんで向こうへ行った。」
「だれかがリュックとってきてって、言ったからー。」
結局、6年生の犠牲者は4人。
混乱。
そうです。6年生の女の子はの何人かは
友だちを心配して泣き出していました。
最後に、どうしても付け加えておきたい事実があります。
あの、一匹のハチにもおそれおののいていたときのことです。
スズメバチが一匹、1年生のTシャツにとまりました。
一瞬、周りのものが青ざめました。
私が行こうとすると、前にいたS君が
さっと1年生に近づいて、帽子でハチを追い払ってくれました。
いざという時にこそ、人の心は現れます。
あのとき、一匹のスズメバチに立ち向かうということが、
どれほど勇気のいることだったでしょうか。
それを、いつものようにさりげなくやってのけたS君には
頭が下がります。
FINE
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