「The 教師力アップ」
Posted By taga on 2015年1月29日
「The 教師力」シリーズも二十冊以上を数えてきた。
僕は半分近くに書いているが、自分の書いた本以外は読んだことがない。
いろいろな執筆者が少しずつ書くというのは、
僕としては「あり」のコンセプトなんだけど、
全員の書いたものが全て心にひびくこともあり得ない。
わずかなページ数なので、文章力のあるなし、
中身のあるなしが露骨に出てしまう。
ある意味、恐ろしい本だ。
これは、僕の書いていることも同じ批判にさらされると言う前提で書いている。
今回の「The教師力アップ」は、おもしろかった。
書く教師の個性と思想信条が現れていて、
電車で二回読むほど、楽しかった。
最近は教育書の書評を書かないようにしているが、
この本は書きたくなった。
どうしても上から目線に聞こえることは、お許しいただきたい。
評なので、あえてそういう物言いにした。
僕が後で「ごめん、ごめん」と言える人についてしか書かない。笑笑
まず、中村健一。
中学生でも読めて分かる内容だ。さすがだと思う。彼は、どこにいっても自分を貫いている。
そして、決して引き下がらない。
読みやすい文面から、信念が伝わってくる。
石川晋。
「やっちまったあ」と言うか、「やっぱりこうきたか」と言うか、
若手教師を励ますような言葉は一言もなく、
自分も主催しているくせに、セミナー文化をこきおろす。
読んでいて気持ちがいいが、若手はこの過激な言葉をどうとらえるのだろうか。
「気をつけなきゃ、です。がんばります。」
なんて言葉を発したら、晋さんはぶち切れするだろうなあ。
青山新吾。
文章を論立てて考えているんだろうね。
この短い中で、導入から末まで、流れるように組み立てている。
個の理解から自己の振り返りへと、主張にはいつもぶれがない。
池田修。
立ち位置がはっきりしている。
教師教育の出口のところを実践している教育者の語りだ。
ふだんから学生たちにこういうことを指導しているのだろうなあ。
そう思うとうれしくなる。
糸井登。
僕の糸井評は、以前から一貫して「誠実な現場教師」ということ。
この短い文の中にもそれがよく表れている。
京都の明日の教室がぶれないのは、糸井さんの力が大きいのだろうと感じた。
赤坂真二。
ようやく大学の先生になってきたなと感じる小稿。
ここしばらく彼の考えているところと僕のそれとが、クロスするところが多く
「リフレクション」ということのとらえも一致する。
ただ一つ、最後の一言だけが、違和感をぬぐえない。
最後にどうしてもこれをやりたくなってしまうという「性」なのかも知れない。
堀川真理。
「マイナスからのスタート」かあ。
みんな本当はそうだったはずだ。
堀川真理が人と違うのは、あけすけにそのことを持ち出してきて
「どうだ」と突き付けてくるようなところだ。
ごつんごつんとぶち当たるような言葉の使い方は、いまだにそうで、
そのために今でも傷だらけにしょっちゅうなる。
そういう人間の言葉には、本当の優しさがこもるのだと思う。
山田洋一。
「語り」の文章である。
従って、語っている途中で終わってしまったという感がある。
もう四ページ必要だったんじゃないのかなあ。
これが意図的な手法だったとしたら、僕は脱帽しかない。
堀裕嗣。
一つ言ったら百くらい返ってきそうだから、言いにくいけど・・・。
今回はびっくりした。
彼が見かけより親切で、過激な言動に合わない優しさを持っていることは分かっていたんだけれど、
その「優しさ」をここでいきなり持ち出してくるとは・・・。
そこから「HOW」と「WHY」へとつながっていく筋立てはさすがだ。
でも、最後の「キモ」という言葉は、なんか違うんじゃないかなあ。
文章の格調が一気に下がったような気がする。
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