「ひとりひとりを大切にする授業づくり」から

Posted By on 2011年11月11日

伊丹で講演させて頂いた。

僕のテーマの一つである「ひとりひとりを大切にする・・・」ということ。

講演の内容を、何回かに分けて、部分的に書いていく。

全部の内容は書かないが、今回は9回に分けて書いていく。

僕の考え方の原点である。

語り口調もそのまま伝えたいので、僕がしゃべったそのままの言い方で書く。

◆ ひとりひとりに徹底しよう

ひとりひとりというのは、教育の原点です。

一見、学級がちゃんと成り立っているように見えていても、大勢が楽しむ中で一人の子どもが地獄のような苦しみを味わっているとしたら、大多数の笑顔は、意味のないものになってしまいます。

ひとりひとりの子どもが、ちゃんと納得のいく笑顔を持ってほしいと、いつも願っています。

でも、一人一人の子どもを見て、理解し、育てることは、至難のワザなのです。

かんたんには、いきません。
僕も日々苦労しています。失敗したり、ときどきうまくいったりしながら、

毎日、一人一人の子どもに、僕はどう考え、どのようにしているのか。

失敗も含めた実践を元に語りたいと思います。

まず、「ふつうの子ども」なんて、いない。という話から。

子どもは、ひとりひとりが自分の人生を生きている、かけがえのない存在なのです。
「ふつうの子ども」って、なんでしょう。
教室にいる子どもたちの三分の一は、だいたい「ふつうの子」だと言われます。
ごんたぼうず、トラブルメイカー、ケンカする子、いじめる子たち、そうした問題行動をとる子どもたちは、まず教師の目が向かいます。

それは、当たり前です。

学級の秩序をつくっていくためには、まずそこからでしょう。

次に、いじめられる子、弱い子、守ってあげないといけない子。

そんな子どもたちにも、目はいきます。

心ある教師なら、当然その子たちにどうするかを考えるでしょう。
成績の優秀な子ども、授業中にどんどん意見を出している子どもたちに、

また逆に、なかなか意見の言えない子ども、アンダーアチーバー、

そのどちらにも、心が行きますね。
それ以外の子どもたち。

目立つことは、上にも下にもなく、

平均的な成績で、特に手をださなくても何も変わらないように見える子どもたち。
この「教師の目が届かない子どもたち」のことを、「ふつうの子」だと呼んでいるのではないでしょうか。
でも、実際には、一人一人が重く意味のある人生を歩んでいます。

意味ある人生を生きている子どもたちを、ふつうの子どもにしないためには、記録しかないと思っています。

ここに、僕のノートがあります。

一ページに一人ずつ名前を書いてあって、その子のことが書いてあります。

ここには、観察していて気づいたこと、子どもと話したこと、おうちの方からうかがったこと、算数の解き方の特徴まで、いろんなことが書いてあります。
書き方も、きまりはないのです。
毎日必ずきっちりと書いているわけではありません。

僕は少しいいかげんなところがあるので、適当な時間を見つけて書いています。

二日間、全く書かないときもありました。
そんないいかげんな書き方であっても、2週間も立つと、そこそこ書いているものです。

ところが、あまりノートに書けていない子どもも、出てきます。

特徴的なことをするわけでなく、いいことでも、悪いことでも、目立たない子ども。

僕のように凡庸な人間には、その子たちの良さをパッとつかんで書くことができません。
こういう子たちが「ふつうの子」なんです。
ノートに書いていないから、その子たちのことを意識して見ようとします。

書くことをさがすんです。

見つからなければ、自分から書くことを作ります。

僕がその子に話しかけて、会話をするようにします。
それで、その子との会話がノートに記録できるのです。

そんなふうにして、ノートを少しずつ埋めていっています。

子どものことを克明に記録した立派なノートなんてできません。

アバウトで、まあまあのノートが精一杯です。
それでも、このノートには、子どもひとりひとりの記録が残っていきます。
ときどき、読み直すのです。

僕が自分の子どもたちとどのようにつきあってきたのか、どんなことをする子どもだったのか、考えながら読みます。
そこに、一つ良いことが書いてあったら、その子とイヤなことがあっても、出直せます。

子どもたち同士の関係が変わっていくことも、分かってきます。
子どもは、長いスパン、流れの中でとらえなければいけないと思っています。

点、つまり瞬間だけでとらえたら、子どもはわからないと、僕は思っています。

記録が積み重なれば積み重なるほど、

僕にとって、ひとりひとりの子どもが、自分に近づいてくるような気がしていきます。

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